同じ星が今見えるなら 僕らはただそれだけでいい

 2011年10月7日。

 世間的には普通の日、かもしれません。けれど私にとってはきっと一生忘れない、特別な日になりました。そうそう。5年前の今日の日も、あの日と同じ金曜日でしたね。

 

 

 

 私がそのことを知ったのは、その日の夜、偶然開いたYahoo!ニュースでした。3連休明けから始まる中間考査のための勉強も一段落し、息抜きがてら錦戸さんを見よう!と思い、ふとパソコンを立ち上げたのが19時30分頃(だったと記憶しています)。何も知らない私の目に映ったのは、“山下智久錦戸亮、NEWSを脱退”という見出し。その時の衝撃を今でもはっきりと覚えています。思考回路はたちまちショートして、その後の勉強は全く手につかず。せっかく書いた文字も、涙で滲んで読めなくなってしまいました。

 

 

 

 今までにも何度か、NEWSや関ジャニ∞、そして錦戸さんに大きな仕事が決定するたびに囁かれていたグループの脱退説。NEWSが24時間テレビメインパーソナリティを務めると発表された時。錦戸さんの初主演映画・初主演連続ドラマが発表された時。その度に「そんな訳はないだろう」とあっさりと右から左へ受け流していたけれど、今回ばかりはすぐに本当だと悟りました。

 

 近頃のNEWSとメンバーとの絆を確かめ合うかのような小山さんの“メンバー愛”。いつの間にかJohnny’s webから削除されていた“NEWSmile”。そして、“関ジャニ戦隊∞レンジャー”での錦戸さんの意味深な文章。

 

 NEWSに何か動きがある。そう覚悟はしていたつもりですが、あまりの衝撃に言葉も出ず。その日のNEWS ZEROで報道されていた時はただただ茫然としていたのに、翌日の深夜0時を回った瞬間に山下さんと錦戸さんの名前が一気にNEWSのプロフィール欄から削除されて、「これは夢じゃないんだ」「こんなにも呆気ないものなのか」と一気に現実に引き戻されたというか。

 

 

 

 錦戸さんがNEWSと関ジャニ∞、前代未聞の2つのグループを掛け持ちすることが決まったあの日から、いつかは錦戸さん自身がどちらかのグループを選ばなければいけない、選ばざるを得ない瞬間が来ることは、心のどこかで覚悟をしていたつもりでした。そして、もし「その日」が来た時、来てしまった時、

 

関ジャニ∞のメンバーとは)お墓に入るまで付き合っていきたい関係

関ジャニ∞を辞める時は、芸能界を辞める時

 

 ———そう公言している彼が選ぶのは、やはり古巣である関ジャニ∞であろうということも、分かっていたつもりでした。けれど、永遠に続くと思っていた、終わることなんてないと思っていた掛け持ちが解消される日が来るなんて。その時が紛れもなく「今」だなんて、本当は全く覚悟なんて出来ていなかったのです。

 

 これから「NEWSと関ジャニ、どっちが大事なの?」(by 中居正広さん)という定番の質問に「両方です!どっちも好きです、うまく生きていかないとだめでしょう?」と苦笑いをしながら答えることも、NEWSと関ジャニ∞の新曲発売やツアー日程のことで両方のグループのファンがやきもきすることもなくなるのだと思うと、何だか少しだけ、ほっとしたけれど。

 

 

 

 それでもやっぱり、私は“NEWSの錦戸亮”が好きでした。大好きでした。

 

 

 

 メンバーを年齢順に並べた時、関ジャニ∞では下から2番目になる錦戸さんですが、NEWSでは最年長。そのことも関係してか、NEWSの“裏の番長”“影のリーダー”と称されるように、関ジャニ∞ではきっと恐らく見ることができないであろう、兄貴分としてNEWSというグループの柱を担う錦戸亮がそこにはいました。

 

 

 

 2012年、関ジャニ∞全国デビュー8周年という節目に開催された∞祭パンフレット*1にて、

 

(錦戸が変わったと感じたのは)NEWSでデビューしてから。亮は亮であっちでいっぱい学んだことがあったんやなぁ、と思った。それこそ関ジャニ∞でコンサートするっていう時に、グッズや衣装について、亮がNEWSの活動の中で会得したことを教えてくれたしね

 

と語っています。その発言にもあるように、4人兄弟の3男坊・根っからの末っ子気質で甘え上手な錦戸さんが、「(自分が)喋らなくても喋ってくれる」という環境を離れて、「喋る人があんまいなくて、喋らな!まとめな!」と自分よりも年下で経験も浅いメンバーを引っ張ろうとしていたことが窺えます。

 

 「最初はそんな風に考えていたけど、途中からやっぱりしんどくなった」「自分が一番楽になれるようにしようと思った」、という気持ちを錦戸さんが抱き始めたのがいつの頃からかは分かりませんが、段々とNEWSというグループ・個人としての知名度が上がるにつれて、はっきりと目に見えていた溝も少しずつ、少しずつ埋まっていくのを感じていました。

 

 2008年年末から2009年年始にかけ開催された“NEWS WINTER PARTY DIAMOND 2008-2009”では、メンバーが主体となり選曲・踊り・衣装・グッズなど全てを自分たちでプロデュースしていくという初めての試みをしたNEWS。「本当にゼロから一曲一曲決めていったらお客さんにどう届くのかっていう…変な言い方をすれば、賭けなんですよね」という言葉が物語るように、このコンサートに賭けるメンバーの想いは相当なものだったのだろうと思います。深夜を回っても続く打ち合わせ。観客の気持ちを想像しながら選曲を決めていく中で、意見がぶつかり合うことも。その中でも、率先してメンバーを取り仕切る錦戸さん。決して大きくはないあの背中が、ものすごく逞しく見えました。

 

 

 

 あの脱退から5年が経った今考えてみれば、“NEWSの錦戸亮”、そして“関ジャニ∞錦戸亮”。そんな違いを見つけて楽しむことは、ものすごく贅沢なことだったのだろうと思います。けれど私は、白の世界(NEWS)と原色の世界(関ジャニ∞)に遜色なく染まることの出来る、自分自身のことを「透明のような感じ。白に重なったら白になるし」と表現していた錦戸亮がたまらなく好きでした。

 

 

 

 それにNEWSというグループの素晴らしさは言わずもがな。楽しい時も、嬉しい時も、悲しい時も、辛い時も。心にそっと寄り添ってくれる、そんな楽曲の数々。少しがさついた男らしい歌声の山下さん・錦戸さん・加藤さん、柔らかくて丸い歌声の小山さん・増田さん・手越さん。一見すると決して混ざり合うことのない両極端な歌声が、合わさると不思議と溶け合って、NEWSにしかない歌声になるのが好きでした。

 人生の2分の1を共に過ごし、幼馴染の男の子同士が呼び合うように「P!P!P!」と山下さんを呼ぶ錦戸さん。「俺たちはNEWSの最年長やから」と小山さんと2人で兄貴ぶる錦戸さん。加藤さんの口いっぱいにたこ焼きをほくそ笑みながら詰め込んだ後、「お前もっと自信持てや。いつも言ってるやろ、『I・ZA・NA・I・ZU・KI』の時も自信持てって」と謎の激励(?)をする錦戸さん。コンサート前、加藤さんのソロ曲『カカオ』『シャララタンバリン』を大音量で熱唱する錦戸さん。「錦戸くん!錦戸くん!」と語尾を強めて先輩をいじる増田さんと、それをまんざらでもない様子で見つめる錦戸さん。いつの間にか「亮くん」と呼ぶようになっていた手越さん。そんなNEWSのメンバーと一緒にいる錦戸さんが好きでした。

 

 

 

 5年前のあの日以来、もう一生「NEWSの楽曲を歌い踊る錦戸亮」「NEWSのメンバーと一緒にいる錦戸亮」を見ることは叶わないと思っていました。どんなに思い焦がれても、もう私の好きだった“NEWSの錦戸亮”はいない。そう自分の気持ちに踏ん切りをつけて、諦めかけていたのに。信じていれば、叶うものなのですね。

 

 

 

 2016年6月15日。NEWSが司会を務める番組『ザ少年倶楽部プレミアム』に、関ジャニ∞がゲストとして出演しました。次回予告にて“次回ゲスト 関ジャニ∞”との告知がなされた時は、もう一度NEWSのメンバーと一緒にいる錦戸さんを見ることが出来るかもしれない…と一瞬だけ浮ついた気持ちになったけれど、あれそれできっと難しいだろうと思っていました。放送2日前にHPが更新され、「錦戸が明かす増田の素顔」という文字を目の当たりにするまで、ずっと胸の奥がざわざわしていた1ヶ月だったように思います。心臓に悪い。

 

 覚悟を決めてテレビの前にスタンバイしたはいいものの、番組開始1分で止めどなく涙が溢れてきて駄目でした(注:まだ本編すら始まっていない)。番組ゲストとして、関ジャニ∞のメンバーとしてNEWSと対面する時に、深々と丁寧に、そしてにっこり微笑みながらお辞儀をする錦戸さん。「今日初めてこの感じなんで、あんまり目も合わせられない」「言うてもちょっとナイーブじゃないですか」なんて言いながらも、何だか嬉しそうに、照れ臭そうに話す錦戸さんがとっても愛おしくて。それだけで胸がきゅぅっと締めつけられました。

 

 そしてそもそも、NEWSと共演出来るという自体が嬉しくて。今まではどこか、タブー———とまではいかないけれど、腫れものに触るというか。「歌番組で顔を合わせても、言葉を交わすことはなかった」とか、脱退した2人に対して「未だに思うことがある」と敢えて引き摺っているメンバーがいたりとか。そんな状況にありながら、「未だに思うことのある」人(=錦戸さん)を前にして、果たして楽しげにトークなんて出来るのかと思っていたけれど、そんな心配は杞憂でした。

 小山さんの「亮ちゃん」呼び。本番と楽屋で一番ギャップのある人は?という質問に、「本番だから本番スイッチは入れるじゃないですか。そうですよね、僕そうでしたよね?昔から…」と唯一本当の楽屋の様子を知っているであろう錦戸さんをいじる増田さん。手越さんのひき肉ダンスを優しい眼差しで見つめる錦戸さん。「(錦戸さんが手で握りつぶしたから揚げを)僕は食べましたよ!先輩だったし怖かったし!」「お前、そんな言い方すんなよー!」と後輩・加藤さんからの衝撃発言にしどろもどろする先輩・錦戸さん。あの頃と変わらない、私の好きだった“NEWSのメンバーと一緒にいる錦戸亮”がそこにはいました。

 

 

 

 さらに嬉しかったことがもう一つ。今年の7月から9月にかけ開催された“関ジャニ∞リサイタル 真夏の俺らは罪なヤツ”。その中で「NEWSの楽曲を歌い踊る錦戸亮」が見られたこと。まさか発売から8年後の夏、この曲で泣くことになるなんて、当時は思ってもみなかったです。

 

 リサイタルでサマタイを披露する———知人からその知らせを受けた時、頭の中は思わず真っ白になりました。脱退から5年後となる2016年夏、とんでもないものを放り込んできたな、と。こんなにも緊張しながら1ヶ月という時間が過ぎるのを待つのは、初めての経験だったかもしれません。そして迎えた当日。私は相当の覚悟と、若干の淡い期待を抱いて会場へと足を運びました。

 

 イントロが流れた瞬間、高鳴る胸の鼓動。まさかあのタイミングで披露するとは思ってもみなかったので、あ、と心の声がダダ漏れになってしまったけれど。きっと間抜けな顔をしていたのだろうな、という後悔はあとにして。始めから終わるまで、決して流すことなく丁寧に、そこにいた誰よりも完璧に歌って踊る彼がいて。しなやかなダンスも、歌い出しの「手招きしてる太陽」の歌声もあの頃のままで。この機会を逃したら、次にいつ“NEWSの楽曲を歌い踊る錦戸亮”を見ることが出来るか分からない。だからこそ、目に焼き付けておきたい、心に刻んでおきたいと思っていたのに。そんな気持ちとは裏腹に、溢れる涙は止まることを知りませんでした。

 

 

 

 けれど、あれだけ思い焦がれていた「NEWSの楽曲を歌い踊る錦戸亮」「NEWSのメンバーと一緒にいる錦戸亮」を見ることが出来て、ようやく前に進めるような気がしました。もう私の好きだった“NEWSの錦戸亮”はいないけれど、“関ジャニ∞錦戸亮”として、エースとして先陣を切って走り続ける彼がいる。更なる高みを目指して、頑張り続ける彼がいる。その事実だけで十分です。

 

 もうあの頃のように、NEWSにいた頃の面影を探して切なくなったりもしない。かつては錦戸さんが歌っていたパートを他の誰かが歌っていても寂しい気持ちになったりもしない。2人の脱退でグループ存続の危機にあった時、「4人でもNEWSを続けていく」という強い覚悟がなければ、もう一生歌われることがなかったのかもしれない楽曲の数々。今では大切に歌い継いでくれて、思いを繋いでくれてありがとう、と感謝の気持ちでいっぱいです。チェリッシュで錦戸さんが「歌って!」とマイクを掲げ自分のパートをファンに託す場面も、そのまま加藤さんが引き継いでいるというエピソードを聞いて、“NEWSの錦戸亮”は確かにそこにいたのだと嬉しくなりました。

 

 

 

 

いつの間にか年重ね 世間で言う立派な大人だね

信じてきたモノはそれぞれに 譲れない部分もそれぞれに

無理に一つにならずに 混ざり合えない日はそのままでいい

一人一人が持つ色だから 鮮やかなマーブル描けばいい

 

 今なら、Shareの錦戸さんが作詞をしたパートの意味が分かるような気がします。

 

 

 

 “同じ星が見えるなら 僕らはただそれだけでいい”。

 NEWS、関ジャニ∞山下智久と別々の道を歩む彼らですが、いつの日か、いつの日か。あの頃のように屈託のない笑顔で笑う6人が見られますように。そう強く願っています。

*1:村上さんインタビュー